「フォロワー数を1年で○万人に」「いいねを毎月○件に」。企業のXアカウントの目標を、こうした数字で決めている担当者は少なくありません。
ただ、フォロワー数はキャンペーンを1回行えば大きく増えますし、いいね数は投稿の内容や時期で大きく上下します。数字が増えても、それがXを運用する目的に近づいているのかどうかは、別に確かめる必要があります。
この記事では、企業公式XのKPIを決めるための手順を、目的別の指標の選び方から整理します。あわせて、企業6社の普段の投稿の反応を調べ、「エンゲージメント率の目安」をどう考えればよいかも検討しました。
企業公式XのKPIを決めるポイント
- KPIは「Xで何をしたいか」から逆算する。 認知を広げたいのか、ファンを増やしたいのか、サイトや店舗に送客したいのかで、見るべき指標は変わります
- エンゲージメント率は、計算式を社内で固定する。 分母を表示数にするかフォロワー数にするかで、数字は大きく変わります
- 他社の数字を「目安」にしない。 6社の普段の投稿を調べると、いいね率の中央値は0.15%〜0.59%とアカウントによって4倍近い差がありました
- 1件の投稿ではなく、中央値で見る。 同じアカウントの普段の投稿でも、いいねの最小と最大には5倍〜300倍以上の差がありました
- キャンペーンとイベントの投稿は、別に集計する。 応募やイベントの話題で膨らんだ数字を、通常の運用の成果と混ぜないようにします
KPIを決める前に:KGI・KPI・指標の関係
KPIを決めるときは、まず次の3つを分けて考えます。
Terms
-
01KGI(最終的な目標)
意味
Xの運用を通じて、事業として達成したいこと
例
新商品の購入者を増やす、採用の応募を増やす
-
02KPI(途中の目標)
意味
KGIに近づいているかを判断するための数字
例
サイトへの流入数、指名検索、ファンからの反応
-
03指標(日々見る数字)
意味
Xやアクセス解析で確認できる数字
例
表示数、いいね、リポスト、返信、保存、リンクのクリック
Xの画面で見える数字は、ほとんどが「指標」です。いいね数そのものを目標にするのではなく、その数字がKGIのどこにつながるのかを決めてから、KPIとして使う指標を選びます。
Xで測れる数字、測れない数字
企業のXの成果を見るときに使える数字は、確認できる場所によって3つに分かれます。
Data
-
01投稿のページ(誰でも見られる)
数字の例
表示数、いいね、リポスト、返信、ブックマーク(保存)、フォロワー数
注意点
他社の投稿も同じ条件で見られる。表示数には広告として配信された分も含まれる(新しいタブで開きます)
-
02自社アカウントのアナリティクス
数字の例
投稿ごとの詳しい反応、フォロワーの推移など
注意点
見られる項目や利用の条件は、Xの仕様の変更で変わることがある
-
03自社のサイトや店舗のデータ
数字の例
サイトへの流入数、購入数、来店数、応募数
注意点
Xからの流入を分けて測るには、リンクに計測用のパラメータを付けるなどの準備が必要
他社のアカウントと比べられるのは、投稿のページで誰でも見られる数字だけです。逆に、売上や購入への影響は、自社のデータと組み合わせなければわかりません。
目的別に選ぶKPIと指標
企業のXアカウントのよくある目的ごとに、KPIの候補をまとめました。1つのアカウントで目的が複数ある場合も、主な目的を1つか2つに絞ってから選ぶと、振り返りがしやすくなります。
Purpose
-
01認知を広げる
KPIの候補
通常投稿の表示数の中央値
日々見る指標
表示数、リポスト数
注意すること
表示数は広告や繰り返しの表示を含む。キャンペーンの投稿は別に集計する
-
02ファンを増やす・関係を深める
KPIの候補
通常投稿のいいね率・保存率の中央値、返信の数と内容
日々見る指標
いいね、保存、返信
注意すること
フォロワーの数より、反応している人の割合を見る
-
03サイトや店舗に送客する
KPIの候補
Xからのサイト流入数、クーポンの利用数
日々見る指標
リンクのクリック、計測用パラメータ付きURLの流入
注意すること
投稿の反応が大きくても、送客が増えているとは限らない
-
04商品・ブランドの話題を増やす
KPIの候補
自社名や商品名を含む投稿・引用の数
日々見る指標
引用、ハッシュタグの投稿
注意すること
検索で数える場合は、期間と検索条件をそろえる
-
05フォロワーを増やす(キャンペーン)
KPIの候補
フォロワーの純増と、キャンペーン後の残存
日々見る指標
フォロワー数、キャンペーン後の通常投稿の反応
注意すること
応募数(リポスト数)を成果にしない
-
06問い合わせ・顧客対応
KPIの候補
返信までの時間、解決した件数
日々見る指標
返信、メンション
注意すること
反応数ではなく対応の質で見る
フォロー&リポストキャンペーンの評価の仕方は、フォロー&リポストキャンペーンの設計で詳しく解説しています。
KnowledgeXのフォロー&リポストキャンペーンの設計応募数より「残るフォロワー」を増やす条件の決め方
エンゲージメント率の計算と、気をつけたいこと
KPIによく使われる「エンゲージメント率」には、決まった計算式が1つあるわけではありません。よく使われる計算式には、次のようなものがあります。
Formula
- 反応の合計 ÷ 表示数
- 投稿を見た人のうち、どれだけが反応したか。表示数に広告の配信分が含まれると下がる
- 反応の合計 ÷ フォロワー数
- フォロワーの規模に対して、どれだけ反応があったか。フォロワー以外に広がった投稿では高く出る
- いいね数 ÷ 表示数(いいね率)
- 反応の種類を1つに絞った指標。Relensの事例記事ではこの式を使っている
また、「反応の合計」に何を含めるか(いいね・リポスト・返信・保存だけか、リンクのクリックや画像を開いた回数まで含めるか)も、ツールや社内の決め方によって違います。
エンゲージメント率をKPIにするときは、次の3点を社内で決めて、記録に残しておきます。
- 分子(どの反応を数えるか)
- 分母(表示数か、フォロワー数か)
- 数字を記録するタイミング(投稿の翌日、1週間後など)
表示数(インプレッション)の数え方は、Xのインプレッションとはで解説しています。
KnowledgeXのインプレッションとは?表示回数の数え方と、企業アカウントが本当に見るべき指標Xのインプレッション(表示回数)の意味と数え方を、Xのヘルプセンターの説明にそって解説します
比較調査:企業6社の「普段の投稿」の反応を調べた
「エンゲージメント率は何%あれば良いのか」という目安は、Xから公表されていません。そこで、Relensの事例記事で取り上げた企業のうち6社について、イベントやキャンペーンと関係のない普段の投稿を集め、公開されている数字から反応の水準を調べました。
Comparison
-
アディダス ジャパン2026年1月5日〜31日・22件
- いいね(中央値)
- 149
- 表示数(中央値)
- 27,391
- いいね率(中央値)
- 0.58%
- いいねの最小〜最大
- 28〜9,719
-
トヨタ自動車2026年1月5日〜31日・35件
- いいね(中央値)
- 200
- 表示数(中央値)
- 42,333
- いいね率(中央値)
- 0.55%
- いいねの最小〜最大
- 93〜1,364
-
DHC2025年11月1日〜2026年1月31日・10件
- いいね(中央値)
- 44
- 表示数(中央値)
- 7,635
- いいね率(中央値)
- 0.59%
- いいねの最小〜最大
- 20〜110
-
セブン‐イレブン・ジャパン2025年11月7日〜14日・20件
- いいね(中央値)
- 511
- 表示数(中央値)
- 249,323
- いいね率(中央値)
- 0.15%
- いいねの最小〜最大
- 213〜2,730
-
イオン2025年12月3日〜19日・14件
- いいね(中央値)
- 207
- 表示数(中央値)
- 60,541
- いいね率(中央値)
- 0.31%
- いいねの最小〜最大
- 69〜1,335
-
ネスカフェ2026年9月5日〜30日・8件
- いいね(中央値)
- 52
- 表示数(中央値)
- 16,142
- いいね率(中央値)
- 0.20%
- いいねの最小〜最大
- 6〜423
発見1:いいね率の中央値は、アカウントによって4倍近く違った
6社のいいね率の中央値は、0.15%(セブン‐イレブン)から0.59%(DHC)まで、4倍近い差がありました。表示数の中央値が最も大きいセブン‐イレブンは、いいね率が最も低くなっています。
表示数が大きいアカウントほど、フォロワー以外の人や広告の配信先にも投稿が届いていて、そのぶん、いいねをする人の割合は下がりやすいのかもしれません。いずれにしても、「エンゲージメント率は○%が目安」という1つの数字を、自社にそのまま当てはめるのは難しそうです。
発見2:同じアカウントの普段の投稿でも、反応には大きな幅があった
同じアカウントの普段の投稿だけを見ても、いいねの最小と最大には大きな差がありました。差が最も小さかったDHCで約5.5倍、アディダス ジャパンでは、アーティストとのコラボの投稿があったことで約347倍の差がありました。
この幅があるため、1件の投稿のいいね数を前の月の1件と比べても、良し悪しは判断できません。KPIにするなら、一定期間の投稿の中央値を使う方が、ぶれの少ない比較ができます。
発見3:イベントの投稿は、普段の中央値と比べると評価しやすい
Relensでは、季節のイベントの投稿を、同じアカウントの普段の投稿の中央値と比べています。たとえば、2025年のセブン‐イレブンのブラックフライデーの告知は普段の1.9〜7.3倍、2026年の箱根駅伝のアディダスの投稿は約144倍のいいねでした(ブラックフライデーの記事、箱根駅伝の記事)。
Calendarブラックフライデー2026はいつ?企業のX施策事例と、普段の投稿と比べた反応の差2026年のブラックフライデーは11月27日(金)。企業のXの施策を4つの型で紹介し、普段の投稿と比べた反応の差も調べました
Calendar2027年の箱根駅伝、企業のXはどう関わる?参考事例7選と企画のヒント箱根駅伝の期間に企業・団体が投稿したXのポスト7件から、2027年の箱根駅伝に向けた企画のヒントを探します
自社のKPIでも、イベントの投稿は「何件のいいねがあったか」ではなく「普段の何倍だったか」で記録しておくと、翌年の企画を判断する材料になります。
この調査は、公開されている数字だけを使った6社の観測で、業種や企業規模の平均を示すものではありません。調べた期間もアカウントによって異なります。
KPIの目標値を決める手順
ここからは、上の調査を踏まえた目標値の決め方の提案です。
- 基準期間を決める。 直近3か月など、キャンペーンや大きなイベントが少ない期間を選ぶ
- 通常投稿の中央値を出す。 キャンペーン・イベントの投稿を除き、表示数・いいね率・保存率などの中央値を出す。これが自社の「ふつう」になる
- 目標を「ふつう」からの変化で決める。 「通常投稿のいいね率の中央値を、四半期で○ポイント上げる」のように、自社の基準と比べた目標にする
- キャンペーンとイベントは別の目標にする。 キャンペーンはフォロワーの残存、イベントの投稿は普段の何倍だったかで評価する
- 見直しの時期を決める。 Xの仕様の変更や投稿の方針の変更があったときは、基準期間を取り直す
月次で見る数字、四半期で見る数字
Cadence
-
01毎月
見る数字
投稿数、通常投稿の表示数・いいね率・保存率の中央値、反応が大きかった投稿と小さかった投稿
理由
運用の状態を確認し、翌月の投稿の内容を調整する
-
02四半期
見る数字
フォロワーの推移、キャンペーン後の残存、サイト流入数などKGIに近い数字
理由
月ごとの上下に左右されず、目的に近づいているかを判断する
-
03イベントごと
見る数字
イベントの投稿の、普段の中央値に対する倍率
理由
翌年の企画の判断材料にする
KPIの決め方でよくある失敗
Pitfalls
-
01フォロワー数だけをKPIにする
起きること
キャンペーンで一時的に増えても、反応しないフォロワーが増えることがある
対策
フォロワーの純増と、通常投稿の反応率をセットで見る
-
02キャンペーンの数字を通常の成果に混ぜる
起きること
リポストや表示数が一時的に大きくなり、翌月以降が下がったように見える
対策
キャンペーンの投稿は別に集計する
-
03表示数の大きさだけで評価する
起きること
広告の配信分や、繰り返しの表示も含まれる
対策
反応率や、サイト流入など別の数字と組み合わせる
-
04他社の数字と比べて目標を決める
起きること
アカウントの規模や業種によって、普段の水準が大きく違う
対策
自社の過去の中央値と比べる
-
051件の投稿で良し悪しを決める
起きること
普段の投稿でも反応には大きな幅がある
対策
中央値と、上位・下位の投稿の特徴で振り返る
KPIを記録するシートの例
Sheet
- 投稿日時
- 2026年11月27日 10:00
- ポストのURL
- 振り返りのときにすぐ開けるように
- 投稿の種類
- 通常/キャンペーン/イベント/告知 など
- 形式
- 画像/動画/テキストのみ
- 表示数・いいね・リポスト・返信・保存
- 投稿の下に表示される数
- いいね率・保存率
- 各数 ÷ 表示数(社内で決めた式で自動計算)
- 普段の中央値に対する倍率
- いいね数 ÷ 基準期間の通常投稿のいいね中央値
- 記録した日
- 投稿の翌日、1週間後など、決めたタイミング
- メモ
- 反応が大きかった・小さかった理由の仮説
よくある質問
企業のXのKPIには何を設定すればいいですか?
Xを運用する目的によって変わります。認知を広げたいなら通常投稿の表示数、ファンを増やしたいならいいね率や保存率、サイトや店舗に送客したいならXからの流入数など、目的から逆算して選びます。
Xのエンゲージメント率の目安はどのくらいですか?
Xから公表された目安はありません。Relensが企業6社の普段の投稿を調べたところ、いいね率の中央値は0.15%〜0.59%とアカウントによって大きく違いました。他社の数字ではなく、自社の過去の通常投稿の中央値を基準にするのがおすすめです。
エンゲージメント率はどう計算すればいいですか?
「反応の合計÷表示数」「反応の合計÷フォロワー数」など、複数の計算式があります。どの反応を数えるか、分母を何にするか、いつの時点の数字を使うかを社内で決めて、毎回同じ式で計算します。
フォロワー数をKPIにしてもいいですか?
フォロワー数だけをKPIにすると、キャンペーンで一時的に増えた数字を成果と見てしまうことがあります。フォロワーの純増に加えて、通常投稿の反応率や、キャンペーン後のフォロワーの残存もあわせて見ることをおすすめします。